2025/07/22
Materials & Design誌: 接着と増殖を操る: 海洋生物由来のハイブリッドタンパク質が開く未来
論文紹介:Development of the FP121 series: Hybrid proteins mimicking marine adhesive proteins with cell adhesion and proliferation activity, Materials & Design 2025,
2025年7月にMaterials & Design誌に掲載された論文Development of the FP121 series: Hybrid proteins mimicking marine adhesive proteins with cell adhesion and proliferation activity, [Materials & Design 255, 114153 (2025). https://doi.org/10.1016/j.matdes.2025.114153] は、「FP121シリーズの開発:細胞接着および増殖活性を持つ海洋接着タンパク質を模倣したハイブリッドタンパク質」海洋生物由来の接着タンパク質を模倣した新しい組み換えハイブリッドタンパク質(FP121)の開発について述べています。我々が行った解析データを使用した研究成果が、このたび論文として掲載されましたので、ご紹介します。
この研究は、上皮成長因子(EGF)ドメインの生理的役割に着目しており、FP121シリーズは細胞接着と細胞増殖の両方を促進することが示されており、これは組織工学や再生医療への応用に大きな可能性を秘めています。特に、FP2のEGF様ドメインが細胞増殖を刺激すること、さらに細胞の運動性に貢献する未認識の能力を持つことが、この研究の重要な発見です。
以下の点から貢献が期待されます。
• FP121タンパク質の優れた接着特性と細胞との親和性
* DOPA修飾は、アミノ酸の一種であるDOPA(3,4-ジヒドロキシ-L-フェニルアラニン)をタンパク質など組み込んで修飾すること。修飾したタンパク質にプラスチックのような物質に対して強力な接着性を持たすことができます。これは、DOPAが持つ「カテコール基」という特殊な化学構造によるもので、特に水中での接着力が強く、イガイなどの海洋生物が岩などにくっつく能力に深く関わっている興味深いものです。
• FP121タンパク質の細胞増殖促進および細胞移動促進活性
結論として、FP121シリーズは、接着性、細胞増殖促進活性、細胞移動促進活性という多機能性を持ち、さらに製造効率が高いことから、組織工学や再生医療、医療機器開発のための新しい生体材料として非常に有望であると言えます。今後は、生産プロセスのスケールアップと生体内性能の検証が、臨床応用への重要なステップとなります。
論文のリンク
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0264127525005738
2025年7月にMaterials & Design誌に掲載された論文Development of the FP121 series: Hybrid proteins mimicking marine adhesive proteins with cell adhesion and proliferation activity, [Materials & Design 255, 114153 (2025). https://doi.org/10.1016/j.matdes.2025.114153] は、「FP121シリーズの開発:細胞接着および増殖活性を持つ海洋接着タンパク質を模倣したハイブリッドタンパク質」海洋生物由来の接着タンパク質を模倣した新しい組み換えハイブリッドタンパク質(FP121)の開発について述べています。我々が行った解析データを使用した研究成果が、このたび論文として掲載されましたので、ご紹介します。
この研究は、上皮成長因子(EGF)ドメインの生理的役割に着目しており、FP121シリーズは細胞接着と細胞増殖の両方を促進することが示されており、これは組織工学や再生医療への応用に大きな可能性を秘めています。特に、FP2のEGF様ドメインが細胞増殖を刺激すること、さらに細胞の運動性に貢献する未認識の能力を持つことが、この研究の重要な発見です。
以下の点から貢献が期待されます。
• FP121タンパク質の優れた接着特性と細胞との親和性
- 市販の細胞・組織接着剤であるCELL-TAKに匹敵する、強固な細胞接着を促進します。
- FP121が持つFP2の部分配列は、細胞膜上のヘパラン硫酸と強力に結合するヘパリン結合性EGF様成長因子(HB-EGF)の配列と類似性があり、ヘパラン硫酸との相互作用を通じて細胞接着を促進する可能性が考えられます。
- FP1をN末端に持つことで、高い細胞接着性能をもちます。
- 物質への接着性を持つDOPA修飾*を必要とせずにプラスチック表面に接着する特性も持ち合わせています。
* DOPA修飾は、アミノ酸の一種であるDOPA(3,4-ジヒドロキシ-L-フェニルアラニン)をタンパク質など組み込んで修飾すること。修飾したタンパク質にプラスチックのような物質に対して強力な接着性を持たすことができます。これは、DOPAが持つ「カテコール基」という特殊な化学構造によるもので、特に水中での接着力が強く、イガイなどの海洋生物が岩などにくっつく能力に深く関わっている興味深いものです。
• FP121タンパク質の細胞増殖促進および細胞移動促進活性
- FP2が細胞増殖を刺激する活性を持つことが初めて示された。
- 細胞の移動を促進した。スクラッチアッセイでは、テストされたすべての組換えタンパク質が細胞移動を促進した。
- 海洋接着性タンパク質由来の生体材料は、低毒性、低免疫原性、生分解性が期待されており、医療応用において大きな可能性を秘めています。
- 既存のムール貝由来の接着剤であるCELL-TAKは、神経細胞、歯周靱帯細胞、造血幹細胞の培養をサポートし、神経突起の成長促進や骨髄由来間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化促進効果が報告されています。
- 細胞接着、増殖、分化の制御が重要な再生医療や生体材料デバイス開発の分野において、FP121シリーズは有望なプラットフォームを提供します。
結論として、FP121シリーズは、接着性、細胞増殖促進活性、細胞移動促進活性という多機能性を持ち、さらに製造効率が高いことから、組織工学や再生医療、医療機器開発のための新しい生体材料として非常に有望であると言えます。今後は、生産プロセスのスケールアップと生体内性能の検証が、臨床応用への重要なステップとなります。
論文のリンク
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0264127525005738