TOPICSトピックス

2025/07/14

【試験実施例6】スクラッチアッセイ:マウス線維芽細胞を用いたタンパク質素材の細胞遊走効果評価試験

はじめに
スクラッチアッセイは、細胞が傷を修復する能力、すなわち細胞遊走能を評価するためのシンプルかつ効果的な試験方法です。この方法は、化粧品や機能性食品の素材が持つ「肌の修復力」や「再生力」を評価するために広く用いられています。
この試験では、培養ディッシュにシート状に増殖させた細胞に人工的に「引っかき傷」(スクラッチ)を作製し、細胞が時間とともに傷を塞いでいく様子を観察・測定します。傷が早く閉じるほど、細胞が活発に移動していること(=細胞遊走能が高いこと)を示します。
このアッセイを用いて遊走活性を高める素材が見つかれば、皮膚の再生や創傷治癒を助ける効果を持つ物質である可能性が高いと考えられます。
今回はスクラッチアッセイを用いた試験の具体例をご紹介します。

1. 試験概要
マウス線維芽細胞(BALB/3T3)を用いてスクラッチアッセイを実施しました。7種類の水溶性タンパク質サンプルについて、細胞遊走能への影響を評価しました。

2. 試験方法
マウス線維芽細胞(BALB/3T3)を培養ディッシュにほぼ満杯になるように培養し、一定幅のギャップ(模擬的な創傷)を作製しました。その後、各タンパク質サンプル、または溶媒対照(何も加えていない比較群)を含む培地で細胞を10時間培養しました。
培養開始時(0時間後)と10時間後に、ギャップ領域を顕微鏡で撮影。画像解析ソフトを用いて、細胞が移動してギャップを埋めた面積(ギャップ閉鎖面積)を算出しました。

3. 試験結果
試験した全てのタンパク質サンプル(サンプル1~7)において、溶媒対照群と比較して統計的に有意な細胞遊走促進効果(p < 0.01)が認められました。特に、サンプル2、サンプル4、サンプル3は、他のサンプルと比較して細胞遊走促進効果を示しました。



図:代表的な創傷ギャップの経時変化 (0h vs 10h) 上記の図は、溶媒対照群と特に効果の高かったサンプル2について、培養開始時(0時間後)と10時間後のギャップ画像です。溶媒対照と比較して、サンプル添加群では10時間後にギャップがより狭まっており、傷が治癒している様子が明確に観察されました。(黄線:ギャップの初期位置、スケールバー:300 µm)

データ提供:長浜バイオ大学 アニマルバイオサイエンス学科 ゲノム多様性研究室




グラフ:平均細胞遊走領域 (10時間後) このグラフは、各サンプル添加後10時間で細胞が移動して傷を埋めた面積を示しています。値が大きいほど細胞の移動が活発であり、創傷治癒効果が高いことを意味します。

データ提供:長浜バイオ大学 アニマルバイオサイエンス学科 ゲノム多様性研究室
 

4. 考察
本試験結果から、7種類の水溶性タンパク質は、いずれもマウス線維芽細胞の遊走を促進する効果、すなわち創傷治癒促進ポテンシャルを有することが示唆されました。

本解析データを使用した研究成果が、論文として掲載されました。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0264127525005738

スクラッチアッセイの幅広い活用分野
スクラッチアッセイは、お客様が開発される素材の評価にとどまらず、以下のような様々な研究開発分野で活用されています。
《化粧品・機能性食品分野での活用例》
  • エイジングケア(抗老化): 線維芽細胞の活性化によるシワ改善、ハリ向上
  • 皮膚修復・再生: 創傷治癒促進、バリア機能サポート
  • 敏感肌向け: ダメージを受けた皮膚の回復サポート
  • 美容(美肌): 体の内側からの皮膚組織の健康維持、ターンオーバー促進
  • 組織修復サポート: 怪我や外科手術後の回復期における栄養補助
《その他の主な活用分野》
  • 医薬品開発: 創傷治癒薬、抗がん剤(細胞浸潤・転移抑制評価)等のスクリーニング
  • 再生医療: 培養細胞の品質管理、遊走能評価
  • 基礎研究: 細胞移動に関わるメカニズムの解明
  • 毒性学: 化学物質等による細胞移動阻害の評価

問い合わせ

OBMリサーチセンターでは、細胞を用いた各種in vitro評価試験を受託しております。
スクラッチアッセイ(細胞遊走試験・Wound Healing Assay)による機能性評価について、ご興味やご検討事項がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

問い合わせ
https://www.obm.ac.jp/orc/contact/form/
 

一覧ページへ

CONTACTお問い合わせ窓口

細胞培養試験ご相談、受託試験のお見積り等、お気軽にお問い合わせください。
以下をクリックしてご連絡ください。

お問い合わせ窓口はこちら